マンション管理組合の『1円も払いたくない病』
話題の不動産プロ集団“全宅ツイ”による不動産コラム⑨
◆管理費って削減しないといけないの?
「1円でも払いたくない病」に罹患している理事会は結構多いもので、コスト削減が自己目的化しがちです。一方で管理費はしっかり払って、サービスを向上させてマンションの価値向上をはかる進め方もありうる筈です。
マンションに住む人は、裕福な人が多いものです。都内の新築なら日本の国内平均の2倍くらいの年収のある人が組合員ということも多いでしょう。旅行はいつもグリーン車、普段は外車に乗っていますという人が、管理費が月に千円ばかり安くなって喜ぶかどうかは疑問です。むしろ、カウンターに若いコンシェルジュさんがいたはずが、いなくなったり、老人ホームみたいになったりしたら怒るのではないでしょうか?
都内の新築マンションだと、もう1㎡買うのに100万円する世界です。このお値段のものをきちんと維持するコストを、月に数十円削ったところで、住民からの感謝につながる気はしません。むしろお金は少し余分に払ってでも、「普通とは違う」という日々の満足を得られたほうが喜ばれる気がするのです。
私のマンションでの管理コストの削減は、「浮かせた剰余金を改善に使う」のが目的で進めてきました。お金がなかった時に直せずにみすぼらしくなった植栽を改善したり、震災で漏水して止まっていた水景施設を復活させたりに使っています。
なにかマンションをよくして「爪痕を残せた」という実感がないと、理事会の役員がコスト削減そのものだけを目的にしていても、やる気には繋がらないと思うのです。
◆理事会役員のすべきこと
マンションは建物が劣化したり、共用施設の利用方法等で多くの問題が起こってきます。これを、速やかに解決するために「速やかに何かを決める」ことが理事会のなすべきことの全てで、そのためにお金を惜しむのも変な気がするのです。
自分で庭の草むしりをするようなことは嫌だからマンションを買ったはずで、これは理事会の役員でも同じです。自主管理のような苦労は誰だってしたくないのが普通ですから、コストを削った結果として管理員・清掃員でもできる仕事を理事がやるのはおかしいわけです。
私のマンションは、管理士・司法書士・弁護士・施工管理技士・税理士との顧問契約があり、年に管理費会計の2%を、管理会社ではカバーしきれないプロのお仕事を依頼するために使っています。これらはいずれも何千時間も勉強してようやくとれる資格ですが、理事にはこなせない士族的な難しい仕事は、お金を出して士族に頼めばいいでしょう。
駐車場の外部貸しの税務申告は税理士さんに、滞納の訴訟は弁護士さんに頼むと勝手に進むことで、理事会は新しい問題の解決に向かうことができます。
戸数が多ければこれだけ多くのプロを起用しても、かかっている費用は、月に専有面積1㎡あたり5円に過ぎません。マンションは多くの人が集まり住む住居です。このスケールメリットを生かせることが最大のメリットであると思うわけです。
◆プロフェッショナルとの付き合いかた
プロの相談費用が確保されていない場合、相談者にとってメリットのある提案がなされていない例が、特にマンションの関連では多い気がします。
つまり、払うべきお金は払って、プロには自分のために働いてもらわないと変なことがあちこちで起こるのではないかと思うのです。
今回私がTwitter 上でよくやり取りしている、不動産系のプロ集団『全宅ツイ』から本が一気に6冊も刊行されたと聞きました。
私は、素人でごく普通の一般人なのになぜか末席に入れていただいていますが、各領域のプロのお話を是非読んでみたいと思います。
プロに適正料金を支払い、しっかり働いてもらうためには、その内情を知ってみることに意味があると思うからです。
湾岸部にされてますが住まいは足立区。大体“プロ”じゃないのになぜか全宅ツイの所属。500戸強のマンションの管理組合の理事を11年。理事長の集まる勉強会RJC48の代表をしています。
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